会社から離職票が届き、もし事実と異なるようであれば、雇用保険の手続き時に異議申し立てができます。
ただし、異議申し立てが通るかどうかは、自分の持っている証拠書類次第です。
なお、自己都合だけど病気やケガでやむを得なく辞めた場合の『特定理由離職者(正当な理由のある自己都合退職)』については『【雇用保険】特定理由離職者の対象者は?【結婚・病気等による離職】【正当な理由のある自己都合退職】』をご覧ください。
動画解説について
雇用保険制度について動画で解説しています。
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よくある離職票の例
あれ、直属の上司は会社都合の離職票を送るって言ってたのに、自己都合の離職票が届いたんだけど。
もしかして、上司は会社都合と言っていたけど、人事からもらった一身上の都合の書類にサインしていませんか?
!?
そういえば、離職票発行に必要だからと、なんか書類にサインした気がする!!
この場合、自己都合の意思表示をした書類が存在しているので、異議申し立てが通る可能性はかなり低いです。
ハローワークは、会社側に立つわけでもなく、離職者側に立つわけでもなく公平に離職理由を判定するからです。
離職票
離職票の作成の流れ
自己都合退職の方を例にして離職票が作成される流れを説明します。
- 本人会社に退職の意思を伝える。
- 本人会社から渡される『一身上の都合により退職の書類』にサインする。
- 会社本人の退職後に、会社がハローワークに『離職証明書』『出勤簿』『賃金台帳』『退職理由がわかる書類』を提出する。
ハローワークが離職票を作成し会社に渡す。 - 会社会社が本人あてに離職票を送付する。
- 本人本人が、離職票をハローワークに持参し雇用保険の手続きをする。
離職票に異議があれば『異議申し立て』をする。
離職理由の異議申し立てについて
離職理由の公平な判定
ハローワークは離職理由の判定について、会社、本人どちらの立場に立つわけではなく公平に判定します。
先ほどの『よくある離職の例』でも触れましたが、
「実際は上司からやめろと言われた」でも「自己都合の書類はサインした」というように、
両者の意見が異なった場合は残った書類で判断するしかありません。
なぜなら、第三者(ハローワーク)は現場には居合わせていないからです。
法律的には口頭でも解雇は有効ですが、結局それを確認するすべがないので、どちらが正しいか判断するには、やはり書類をもって判断するしかありません。
ただ、注意して欲しいのはハローワークはあくまで雇用保険上の離職理由の判定だけを行っているということです。
例えば、ハローワークは認めなかったとしても会社と本人が裁判で解雇等について争うことはもちろんできます。
逆に言うと、手元に自己都合の離職票があっても、会社が認めさえすれば解雇(会社都合)になります。
つまり、本人の異議申し立てだけで、『解雇(会社都合)』になることは100%ありません。
当たり前ですが、『解雇(会社都合)』は、文字通り、会社が認めないと成立しない離職理由だからです。
自分だけが解雇と主張しているのは、『本人が一方的に解雇と主張している』というだけだからです。
異議申し立ては2種類あります。
通常、本人がハローワークで異議申し立てをすると、会社の管轄のハローワークから会社に離職理由の確認連絡がいきます。
ですが、申し立ての種類によっては会社に確認しない場合があります。
異議申し立てをするといつ頃結果がわかるのか?
会社に確認するケースは、会社の回答の速さ次第になります。
ですので、会社が非協力的で回答しない場合は、いつまでも待つことになります。
会社都合になる離職理由(特定受給資格者)
最近、給料がいつも遅れて振り込まれるんで、もう自分から退職してやった!
自己都合の離職票だから給付制限かかるのはしょうがないな・・・。
この場合は、会社都合の離職理由になる可能性があります。
会社都合は、雇用保険の専門用語で『特定受給資格者』といいます。詳細を知りたい方は『ハローワークの離職理由コード(離職票、雇用保険受給資格者証)』をご覧ください。
以降、特定受給資格者の要件と必要書類について解説しています。
要件を詳細に書くと法律書みたいなわかりにくい文章及び長文になるので、かなり簡略化して書いています。
ざっと見てみて、『あ、該当するのかな?』と思ったら証拠書類をもってハローワークに相談してみて下さい。
1 倒産等による離職
倒産
会社が倒産した場合
倒産した事実がわかる書類
大量解雇
大量の雇用変動の届け出があった場合
ー
これは特殊なケースなので気にしないでください。
事業所の廃止
事業所が廃止された場合
ー
基本的には倒産と同じと考えてください。
事業所の移転による通勤困難
・事業所の移転について事業主から通知され、通勤時間が往復4時間以上になったため退職した場合
事業所移転の通知等
事業所が移転した場合です。
2 解雇等による離職
解雇
事業主からの解雇通知
解雇予告通知書、退職証明書等
もし、書類なして異議申し立てをする場合は、本人から事前に会社に連絡をしておいた方が良いと思います。ハローワークは事情を知らない人事担当に機械的に確認するだけだからです。
労働条件の相違
労働条件と実際の就業条件が著しく異なる場合(1年以内の退職)
労働契約書、就業規則
例としては、
『週休二日の条件だったのに、1日しか休みがない』
『社会保険加入となっていたのに、加入してくれない』等です。
このように、明らかな相違の場合が該当します。
給料の遅配
賃金の支払いが毎月の給料日より遅れた事実があった場合
給与の支払い日がわかるもの(預金通帳)、労働契約書、就業規則、給与明細
なお、給料の遅配は退職日から1年以内の事実に限ります。
賃金低下
・基本給が85%未満に低下した場合
労働契約書、就業規則、賃金規定、賃金低下の通知書等
基本給が低下した場合のみです。
残業代や歩合の減少は該当しません。
定年の再雇用や、役職定年等、事前に予見可能な賃金低下は該当しません。
いつといつを比べて賃金低下とみなすかは、とても長い話になります。ので、
正確ではないですが『退職日直近6か月』と考えてください。
残業時間等
・離職日以前6月のうち、連続した3か月間にそれぞれ45時間を超えて時間外労働及び休日労働した場合。
・離職日以前6月のうち、いずれかの月で一月あたり100時間以上時間外労働及び休日労働した場合。
・離職日以前6月のうち、2か月以上の期間で平均して一月当たり80時間を超えて時間外労働及び休日労働した場合
・事業主が危険又は健康障害を生じることを行政機関から指導されているのにもかかわらず、なんの対策もしない場合
・事業主が妊娠中もしくは出産後、子の養育、家族の介護がある労働者に不利益な取り扱いをした場合
タイムカード、給与明細等
職種転換への配慮なし
・採用時に特定の職種を契約書上明示されていたが、配置転換を通知され(転換の1年前に限る)、かつ賃金が低下し職種転換直後(3か月以内)に退職した場合
・採用時に特定の職種を明示されていなかった場合で、10年以上同一職種についていたが、配置転換の際に教育訓練を行われなかった場合
・契約書上勤務場所が限定されていたが、転勤を命じられた場合
・権利濫用に当たるような事業主の配置転換
採用時の労働契約書、配置転換辞令等
3つ目は、往復4時間以上の通勤時間になる場合です
4つ目は、例えば介護等のため絶対に転勤はできないと会社に言っていたのに、転勤辞令が下ったような場合です。
期間の定めのある労働契約が更新されなかった場合(3年以上雇用されている)
期間の定めのある労働契約が更新されず(3年以上雇用されていて1回以上更新されている場合)
、かつ、労働者本人が雇用の継続を希望している場合
労働契約書、契約更新通知書
これは期間が定められていても、3年も契約が続いたという事は、『労働契約が常態化している』ということです。
つまり、会社側も続けてくれることを期待してますし、労働者側も続けるとみなせるということです。
定年後の再雇用については該当しません。
期間の定めのある労働契約が『更新の確約』があるが更新されなかった場合
期間の定めのある労働契約が、更新の確約があるが更新されなかった場合
労働契約書
つまり契約書に『更新する』と明示してある場合です。
『更新がありうる』というのは確約ではありません。
実務的には『更新する』と確約している契約書ってあんまりないんじゃないかと思います。
上司・同僚からのパワハラ
上司・同僚から故意のパワハラ等を受けた場合
事実が確認できるもの
正直これはかなり難しいです。故意かどうかと、それは業務上必要な指導だったのかどうかとの線引きが難しいからです。
証拠書類も難しいです。ご自宅の管轄のハローワークに何が必要か確認してください。
一例としては、
同僚から『上司からパワハラを受けていた経緯』を一筆書いてもらう等です。
退職勧奨
退職勧奨された場合又は希望退職に応じた場合
希望退職募集要項
希望退職は恒常的に制度として設けられているものは該当しません。
制度の導入が1年以内で、募集期間が3か月以内のものが該当します。
休業
休業手当が3か月以上連続して支払われた場合
給与明細書
事業主のせいで休業手当をもらっていた場合です。
三か月後に、通常の賃金をもらえるようになってから退職するのは該当しません
事業所の法令違反
事業所が法令違反の製品等を製造し、それを知ってから3か月以内に退職した場合
事業主の業務が法令に違反したことがわかる資料
その他の雇用保険の手続きについて
その他の雇用保険の手続きについては『雇用保険の全手続きのまとめ【金額は?計算方法は?いつからもらえる?会社都合?】』をご覧ください。